日本からすると特異な英国法Part 36 Offerとは


皆様こんにちは。



今日はイギリスの法制度をご紹介したいと思います。


イギリスには,当然ですが日本とは異なる法制度や司法制度が存在します。


そのうち,私がロンドンの法律事務所で実務研修を開始した当初に知り,興味深いと思った制度について書きたいと思います。


Part 36 Offerと呼ばれるものです。


イギリスの民事訴訟法(Civil Procedure Rules)のPart 36に定められているため,このように呼ばれています。


どういうものか具体例で説明しますと以下のようになります。


原告が被告に対し2000万円の売掛金の支払いを求めて提訴したとします。


この裁判中に被告側が原告側にPart 36 Offerとして1000万円支払うのでこれで解決して欲しいとの和解の提案をしたとします。


和解の提案ですから,原告側はこれを受け入れても,蹴っても自由です。


検討の末,原告は蹴ったとします。


これにより裁判は続行しました。


判決に至り,判決を見てみると・・。


900万円が認定されましたが,その余は請求棄却となり,原告は一部勝訴にとどまりました。


日本であれば,特にこれで問題はなく,900万円の支払いを被告から受けるか,支払いがなければ,強制執行するなどするだけです。和解しておけばよかったな…とは思うでしょうが。


が,イギリスでは異なります。


この場合,原告が被告が和解提案をして,いつまでに回答するようにと言ったその期限以降の一切の被告の訴訟費用(イギリスの場合弁護士費用を含みます)のうち,多くを原告が負担しなければ
なりません。(通常保険でカバーされますが。)


「多く」とは,事案によりますが,おおむね6割から7割と言われています。


ここで,前提としてイギリスには敗訴者負担制度があります。(日本にはありません。弁護士費用は勝っても負けても一部の例外を除き原則として自己負担です。)


そのため,イギリスでは,訴訟で敗訴すると,敗訴者が勝訴者に対して,勝訴者の訴訟費用(弁護士費用を含む)の多くの部分を支払わなければいけません。



ということは,上記の例の場合,原告は一部とはいえ勝訴していますから,本来原告は敗訴者である被告から,自らの訴訟費用の大部分を回収できるはずなのです。


ところが,被告がせっかく早期解決を目指し和解の提案をしたのに,これを蹴って,しかも判決の額が被告の和解提案額より同額または低い場合には,いわばペナルティとして,逆に和解の承諾期限以降の被告の訴訟費用の多くは原告が負担するというルールなのです。


これにより紛争の早期解決を促し,多大な時間とコストがかかる証人尋問を回避しようというのがその狙いの一つです。


こうした制度にはいろいろな意見があると思いますが,国が違うと結構制度が違うもので,勉強すると,これまで当然だと思っていた概念が覆り,
いろいろな考えや感想が生まれたりするものです。


皆様はどうお考えですか。


読んで下さりありがとうございます。



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