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「労働者の労働能力を問題として解雇することはできるのでしょうか。」

 

 かつて外資系企業でよく行われていた労働者の労働能力が低いことを理由として労働者を解雇するという動きがだんだんと国内資本企業にも広がりつつあります。

 しかし,労働能力が低いことを理由として労働者を解雇するには注意が必要です。

 一般に日本の労務では,労働者の労働能力については,相対評価,つまり他の人と比べて労働能力・技術がどうかという視点ではなく,絶対評価,つまりその人が改善できているか,努力をしているかという視点で評価することとされています。

 したがって,たとえば,同時期に入社した10人の労働者がいたとして,そのうち2人が他の8人に比べて労働能力の点で劣っていると評価されることがあっても,それだけの理由をもって解雇することは一般的にはできません。

 「退職勧奨と解雇の違い」という記事でも述べたとおり,解雇というのは労働者の地位に重大な影響をもたらすことから,特に日本では歴史的に労働者の地位を強く保護している傾向にあるのです。

 そうだとしても,特に中小企業などでは,パフォーマンスの悪い人員を抱え続けることは,事件費の観点からも大きな問題ですし,他の従業員への悪影響という観点からも重大な問題ですから,何とかしたいと考えるでしょう。

 労働能力を理由とした解雇が絶対に無理なのかと言われればもちろんそうではありません。

 何度も明確に指示を出しているのにこれらに従わない,無断欠勤や遅刻が多い,会社に実際に重大な損害が生じたなど,一定の場合には解雇が認められる場合があります。

 また,一般に新卒などで採用されて数年のうちというのは,通常業務に慣れてスタンダードなパフォーマンスを発揮するのに時間がかかるでしょうから,労働能力を理由とした解雇は認められにくい傾向にあるといえます。

 反対に,ある能力を買われて,高い給料でヘッドハンティングされたが,実はそのスキルを持っていないことが判明したなどの場合には,そのスキルを買われて特殊な条件で雇用されたわけですから,解雇が認められやすいといえるでしょう。

 いずれにせよ,経営者の目から見て,単に「出来が悪い」というレベルでの解雇は問題がありますので,注意する必要があります。

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